◆冒頭
働いているのに「働いたこと」にならない?
それ、本当に“労働時間”ですか?
働き方改革の推進や、テレワーク・フレックス制度の普及により、「労働時間」の考え方が複雑化しています。
しかし、「労働時間とは何か?」という基本をしっかりと押さえることは、すべての企業と労働者にとって非常に重要です。
今回は、実務でよくある疑問を交えながら、「そもそも労働時間とは何か?」について解説いたします。
◆労働時間の定義は「指揮命令下にある時間」
まず、法律上の定義を確認しましょう。
労働時間とは、使用者(会社)の指揮命令の下に労働者が置かれている時間をいいます。(これを「指揮命令下」と呼びます)
つまり、パソコンに向かって作業をしている時間だけが労働時間ではありません。
会社の指示で待機していたり、着替えをしていたりする時間も、場合によっては労働時間に含まれるのです。
◆よくある労働時間の誤解(Q&A形式)
Q1 始業前に自発的に出社して準備した時間は労働時間?
A 使用者が黙認していれば労働時間と見なされる可能性があります。
例:メールチェックや資料の印刷などが“黙認された”状態になっている場合は、労働時間と判断される可能性が高くなります。
Q2 制服に着替える時間は労働時間?
A 業務上着替えが義務付けられている場合は労働時間に含まれます。
更衣が就業の一環とされている場合、出社からの時間を労働時間として管理する必要があります。
Q3 休憩中に電話番や来客対応をしている場合は?
A 自由利用できない時間は休憩ではなく、労働時間に該当します。
休憩は“完全に業務から解放されている”必要があります。
その間に業務指示があれば休憩時間ではなく、「手待ち時間」となります。
Q4 会社の命令で外出や出張する際の移動時間は?
A 業務命令による移動時間は原則として労働時間に含まれます。
ただし、自宅から出張先までの移動など、出勤と同様の扱いとなる移動時間には注意が必要です。
Q5 15分未満を切捨てで行っていますが、切捨てた時間も労働時間?
A 原則、1分単位で判断することになるため、切捨てることはできません。
そのため、切捨てた時間分が労働時間と判断され、未払い賃金になる可能性があります。
◆「労働時間の見えにくさ」がトラブルを生む
実は、労務トラブルの多くが「労働時間の認識のズレ」から始まります。
- 従業員:「仕事していた時間が残業に入っていない」
- 会社側:「タイムカードの時間がすべてだと思っていた」
このようなギャップは、未払い残業問題や労働基準監督署の調査など、企業にとって大きなリスクにつながりかねません。
◆実態に即した労働時間管理を
記録(タイムカードや勤怠システム)も重要ですが、それ以上に重視されるのが「実態」です。
- 指示されて動いている時間
- 業務に従事していると見なされる状況
これらを的確に把握し、適切に管理することが、コンプライアンスを守り、生産性を高める第一歩となります。
◆まとめ:労働時間は“時間”ではなく“関係性”で決まる
労働時間とは、「何時から何時まで働いたか」ではなく、
その時間に、使用者とどのような関係にあったかによって判断されるものです。
企業とっては、表面上の勤怠だけでなく、働き方の実態を見つめ直す視点が求められます。
一方で従業員にとっても、どの時間が「労働時間」としてカウントされるのかを正しく知ることは、自身の働き方を守る上で非常に重要です。


