◆冒頭
7月に入り、本採用となった方も多くいらっしゃると思います。
新たに従業員を雇い入れた際、多くの会社では「試用期間」を設けていること多いです。
「試用期間」は会社が任意で設けることができますが、「特に理由もなく設けている」や「とりあえず○ヶ月」と言った感覚で運用しているケースがしばしば見られます。
「試用期間」は、実際に働いてみないとわからないことが多いため、会社側と応募者側とのミスマッチを防ぐためにも有効な手段として使われることが多いです。
しかし、その分トラブルに発展するリスクも兼ね備えております。
今回トラブルに発展しないために、「試用期間」に関する基本知識や実務上のポイントについて解説いたします。
◆試用期間とは?
試用期間とは、採用した労働者の勤務態度、業務の適性や能力などを評価するための一定期間のことを指します。
この試用期間を設けている雇用契約のことを「解約権留保付雇用契約(かいやくけんりゅうほつきこようけいやく」と呼ばれ、通常の解雇よりも広い範囲で認められやすいのが特徴ですが、その場合であっても客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と是認されるものでなくてはなりません。
◆試用期間中でも雇用契約は成立している
ここで重要なのは、試用期間中であっても「雇用契約」は既に成立しているということです。
つまり、会社には通常の雇用と同様に、以下の義務が生じます。
- 社会保険・雇用保険への加入(条件を満たす場合)
- 残業代の支払い
※試用期間中だから、「保険に入れない」や「残業代は出ない」は法違反となります。
◆試用期間の長さはどのくらいが適正?
法令上、明確な上限はありません。
しかし、勤務態度、業務の適性や能力を判断するのに、最低限必要な期間を設けることが望まれます。必要以上に長期間に渡る試用期間は、無効または本採用とみなされる可能性があります。
◆試用期間の明示と本採用条件は雇用契約書に明記
雇用契約書や労働条件通知書には、以下のような内容を明確に記載することが重要です。
記載すべき項目
- 試用期間の有無・期間
- 試用期間中の労働条件(給与・手当など)
- 本採用の判断基準
- 本採用を見送る場合の対応方法(契約解除の手続き)
※「就業規則に記載されているから」ではなく、契約書等で個別明示することが望まれます。
◆試用期間中は給料を下げてもよい?
法令上は可能です。
しかし、本採用後と差が大きいほど、応募が少なくなる場合があります。
◆試用期間を延長することはできる?
原則、延長の可能性がある場合、雇用契約書や就業規則等にあらかじめ記載しておく必要があります。
◆まとめ
「試用期間」は、会社と従業員の双方にとって重要な“見極め期間”ですが、その取り扱いを誤ると、不当解雇や労使トラブルに直結するリスクがあります。
従業員から、期間の長さ、賃金の差や判断基準など質問された時に、きちんと応答できるように今一度自社の規定を見直してみてはいかがでしょうか。